問題社員対応とは?労務に精通した弁護士が解説

問題社員対応とは?労務に精通した弁護士が解説

問題社員対応とは

 現代社会では、会社の規模の大小にかかわらず、いわゆる「問題社員」はどこの会社にも存在している可能性があります。例えば,会社の指示に従わない社員、遅刻欠勤を繰り返す社員、能力に問題のある社員(ローパフォーマー)、協調性のない社員、あるいは社内で窃盗、横領行為等に及ぶ社員などです。問題社員の問題が顕在化すると、他の社員の退職、意欲の低下など,職場環境の悪化、生産効率の低下等を誘発することとなり,悪影響を及ぼしかねません。そのため、問題社員対応にあたっては,着地点を見据えたうえでの適切な対応を早期に図る必要があります。

 

問題社員の類型

 問題社員と一言で言っても,様々な切り口から考えられます。以下は,典型的な問題社員の類型です。

1 能力不足・適格性が欠如する社員(仕事ができない・ローパフォーマー社員)

 ミスを連発する,仕事が遅い,効率が悪い,仕事が取れないなど,勤務成績が著しく不良な社員

2 職場規律違反・勤務態度不良の社員(不誠実・協調性不足)

 無断欠勤や遅刻、職務放棄など職務怠慢を繰り返す社員

3 会社の命令や指示に従わない・違反する社員(会社のルールを守らない)

 通常の業務に関する指示・命令、時間外労働命令や休日労働命令、あるいは出張命令など、上司の指示・命令に違反する社員

4 非違行為を行う社員(犯罪行為・モラル欠如)

 横領、背任、会社備品の窃盗・損壊、上司や同僚への暴行・暴言などの非違行為,インターネットなどによる会社への誹謗中傷、機密情報の漏えい、取引先を奪って競合他社を設立するなど誠実義務に違反する社員

会社への誹謗中傷を行う社員の対応事例>>>

弁護士による問題社員対応

1 解雇の選択は慎重に

 問題社員対応の着地点は解雇に限りませんが、解雇をしたいと考える企業は非常に多いといえます。しかしながら、解雇通告をすることによって問題社員の問題を一気に解決できることは基本的にはありません。日本では,従業員の解雇は極めて厳格な法規制が施されており,解雇することは極めて困難です。

(解雇)

 第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 これまでの労働裁判例の蓄積により,解雇には合理的な理由が必要であるとのルールができあがりました(解雇権濫用法理)。上記の労働契約法第16条は解雇権濫用法理を明文化したものです。

 使用者側が,労働基準監督署で解雇について相談し,「こんなひどい事案なのだから解雇できて当然だと思う」と相談し,監督所から前向きな返事を得たことを理由に,「解雇してもいいですよね」ということで相談にいらっしゃる方が稀にいますが,このような発想は危険です。まず,前述のとおり解雇の有効性を判断するのは労基署ではなく裁判所です。また,「こんなひどい事案」が,第三者が見ても,本当に使用者が述べているとおりの「ひどい事案」であるのか,終局的には,双方の主張立証を経た上での事実認定を経なければわかりません。解雇と一口に言っても,後に無効とされるリスクがある以上,慎重に判断する必要があります。

 問題社員対応を一歩間違えると、解雇無効やパワハラという形で裁判となり、場合によっては1000万円といった規模の未払賃金(バックペイ)や損害金の支払い命令が出されかねず、その場合の会社経営へのダメージは計り知れません。安易な対応は、かえって会社を苦しめる結果ともなりかねませんので、正しい手順に沿った適切な対応が求められます。

 ここで、経営者の方から,「どうしてこんなにも解雇規制が厳しいのか」,「問題社員すら守る日本の法律は厳しすぎる。ひどい仕打ちを受けているのはむしろ会社なのに」といった声を聞くことがあります。確かに,厳しすぎる面があることも否めないところです。

 裁判所は,一般的に、解雇の事由が重大で、他に解雇回避の手段がなく、かつ労働者側に宥恕すべき事情がほとんどないといえるような場合にのみ解雇の有効性を認めている状況です(中途採用のローパフォーマーの解雇などの場合は当てはまらない場合もあります)。このような現状をしっかりと認識した上で,個々のケースに応じた慎重かつ入念なプロセスを踏まえた対応が必要となります。

2 方針決定

 把握した事実関係に基づいて,今後の対応方針を決定します。大まかな対応としては,人事上の措置(配置転換・降格等),懲戒処分(懲戒解雇を除く),退職(退職勧奨,普通解雇,懲戒解雇等)などです。例えば,解雇を念頭に方針を進める場合,法的紛争になった場合の見通しや他の従業員への波及問題等を踏まえ早期解決を目指す若しくは徹底して争う,といった採るべき対応を決定します。解雇事件における主要な争点は、解雇事由の有無,適切な手続きが取られているか等ですが,解雇事由の有無が主要な争点であることは間違いありません。極めて法的な問題であるため,時系列等に沿って詳細に検討する必要があります。解雇事由までは認められない場合には,退職勧奨や配置転換等,別の対応を検討する必要があります。

3 交渉、労働審判、訴訟

 決定した方針に従い、従業員との交渉等を行うことになります。交渉の仕方によって解決に至る,至らない場合もありますし,本格的な争いとなった場合には、労働審判、訴訟等で会社側の正当性を徹底して主張・立証することになります。(労働審判・訴訟において和解の選択肢を取ることもあります。)

 

弁護士に依頼するメリット

 以上のとおり,問題社員を放置することは会社にとって深刻な結果を招き,他の社員の意欲等に大きく影響することから,放置することが許されない問題であると言えます。問題社員対応にあたって重要なのは、従業員の問題行動への注意・指導のプロセスであり,これができていないと,その後どのような対応方針を取ったとしてもうまくいかず,逆に,無用な紛争を招いてしまうことがあります。

 さいたまシティ法律事務所では、配置転換、懲戒処分、退職勧奨、場合によっては解雇に至るまでのスキームを個々のケースに応じてアドバイスをご提供することが可能です。これにより、トラブルのリスクを最小限にとどめることが可能です。

 また,すでに起きてしまった労働問題への対応だけではなく、将来のリスク回避のために現在起きている問題を二度と生じさせないように取り組むことが経営強化につながります。さいたまシティ法律事務所では,問題発生の根本を探求し、就業規則の整備・改善や、実際上の労務運用までリスク回避策を積極的に提案しています。問題社員の対応よりも,問題が発生しない土壌を作ることが、会社や従業員にとって何より望ましいものであり,経営の安定化につながります。

 問題社員でお悩みの際には、無用なトラブルが拡大する前に是非ご相談ください。

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    Last Updated on 2024年4月17日 by roumu.saitamacity-law

    この記事の執筆者:代表弁護士 荒生祐樹

    さいたまシティ法律事務所では、経営者の皆様の立場に身を置き、紛争の予防を第一の課題として、従業員の採用から退職までのリスク予防、雇用環境整備への助言等、近時の労働環境の変化を踏まえた上での労務顧問サービス(経営側)を提供しています。労働問題は、現在大きな転換点を迎えています。企業の実情に応じたリーガルサービスの提供に努め、皆様の企業の今後ますますの成長、発展に貢献していきたいと思います。

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    発達障害の従業員への対応方法とは?適切な対応方法を弁護士が解説

    発達障害とは

    発達障害者支援法第2条の定義によると、発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」とされています。発達障害のある人は、他人との関係づくりやコミュニケーションなどがとても苦手である一方、優れた能力が発揮されている場合もあり、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害とされています。

    発達障害の特徴

    発達障害には、症状における特性に応じて様々なタイプがあります。 

    1 自閉スペクトラム症 (ASD)

    自閉スペクトラム症は、社会的な相互作用やコミュニケーションにおいて困難を伴う状態で、興味や行動の範囲が限定的であったり、繰り返し行動を行ったりすることが特徴です。ASDは広範なスペクトラムであり、軽度から重度までさまざまな症状が見られます。

    2 注意欠如・多動症 (ADHD)

    注意欠如・多動症は、注意力の欠如、集中力の維持が難しい、多動性、衝動的な行動が特徴の障害です。ADHDは日常生活や学習において困難を引き起こすことがあります。

    3 学習障害 (LD)

    学習障害は、読み書きや計算、推論など特定の学習分野で著しい困難を示す状態です。知的能力に問題があるわけではなく、特定の認知処理に問題があることで学習に影響を与えることがあります。

    4 発達性協調運動障害 (DCD)

    発達性協調運動障害は、運動スキルや身体の協調動作が発達の年齢に見合わないほど遅れている状態です。日常生活の中で手先の器用さや体の動かし方に困難を感じることがあります。

    5 コミュニケーション障害

    言語発達遅滞や、発話に困難を伴う言語障害、発音や言葉の使い方に問題がある音声障害など、言語やコミュニケーションに関する障害です。

    6 知的能力障害

    知的能力障害は、知的機能や適応行動に制限がある状態で、発達の過程で学習や日常生活の遂行に困難を伴うことがあります。

    発達障害のグレーゾーンとは

    1 発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の特性があり、診断基準であてはまる項目があるものの確定診断には至らない、発達障害の傾向があるという状態をあらわす言葉です。正式な診断名・疾患名ではありません。

    2 発達障害は外見からは判別できない障害であり、また、上記のとおり発達障害の特徴や程度にも様々なものがあり、周りの環境などによって症状の現れ方が大きく異なります。したがって、明確な診断がされる発達障害ではないものの、発達障害の特徴を部分的に持つために、日常生活や社会生活で一定の困難を経験する状態に至ることがあります。

    3 グレーゾーンの特徴としては、以下の内容が挙げられます

    ⑴ 診断基準に達しない

    発達障害の正式な診断を受けるためには、DSM-5やICD-11などの国際的な診断基準を満たす必要がありますが、グレーゾーンの人々はその基準を満たさない場合があります。

    ⑵ 部分的な症状の存在:

    ASDやADHDの特性を持っているものの、その症状が軽度であるために診断には至らないケースです。これらの特性が社会的な関係や仕事において支障をきたすことがあります。

    ⑶ 支援が必要な場合がある

    明確な診断がないため、特別な支援や配慮が受けにくいことがありますが、実際には生活上のサポートが必要なことがあります。

    企業に求められる合理的配慮・発達障害の従業員に対応する適切な対応方法

    平成28年4月に改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野における障害者差別は禁止そして、合理的配慮の提供は義務とされました。なお、障害者差別解消法においても合理的配慮について定められていますが、こちら努力義務であるのに対し、障害者雇用促進では、合理的配慮を提供する事業主の義務は法的義務となっています(障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A・Q4-1-2)。

    合理的配慮に関しては厚生労働省が指針を策定しており、発達障害も含め、合理的配慮に関する事例集も策定されています。(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html

    上記の合理的配慮の事例集においては、障害類型別に合理的配慮の内容が策定されています。事例集における発達障害に関する合理的配慮の一例として、「募集・採用の面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること」、「募集・採用の面接・採用試験について、文字によるやり取りや試験時間の延長を行うこと」、「採用後に業務指導や相談に関し、担当者を定めること。」「採用後に業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。」などが挙げられています(合理的配慮事例集65頁以下)

    また、令和5年6月11日付け朝日新聞デジタル版の記事「発達障害の社員が求める配慮「わがままではなく企業成長のチャンス」では、企業の具体的な取り組みが紹介されています(https://www.asahi.com/articles/ASR5S53JCR5PUTFL00L.html

    職場環境の構築はさいたまシティ法律事務所にご相談ください

    企業に求められる合理的配慮については、法律上の義務とされ、企業は必然的に対応が求められています。一方で、障害者雇用促進法の改正は比較的最近のことであり、どのような対応が必要なのか戸惑われている会社も多いことでしょう。

    職場環境の構築においてお悩みがあれば、ぜひさいたまシティ法律事務所にご相談ください。

    以上

    法律相談のご予約はお電話で TEL:048-799-2006 平日:9:30~18:00 さいたまシティ法律事務所 法律相談のご予約はお電話で TEL:048-799-2006 平日:9:30~18:00 さいたまシティ法律事務所 ご相談の流れご相談の流れ メールでの相談予約メールでの相談予約

    問題社員を解雇するには?不当解雇とならないためのポイントを弁護士が解説

    問題社員を解雇するべき理由

    現代社会では、会社の規模の大小にかかわらず、いわゆる「問題社員」はどこの会社にも存在している可能性があります。例えば、会社の指示に従わない社員、遅刻欠勤を繰り返す社員、能力に問題のある社員(ローパフォーマー)、協調性のない社員、あるいは社内で窃盗、横領行為等に及ぶ社員などです。問題社員の問題が顕在化すると、他の社員の退職、意欲の低下など、職場環境の悪化、生産効率の低下等を誘発することとなり、悪影響を及ぼしかねません。そのため、問題社員対応にあたっては、着地点を見据えたうえでの適切な対応を早期に図る必要があります。

    問題社員を解雇するうえで確認すべき大事なポイント

    (1)解雇の前に退職勧奨を行う

    問題社員の解雇をしたいと考える企業は非常に多いといえますが、しかしながら、解雇通告をすることで問題社員の問題を一気に解決できることは、基本的にはないといってよいでしょう。日本では、従業員の解雇は極めて厳格な法規制が施されているため、慎重な検討を経ずに解雇することは極めて困難です。

    (解雇) 第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
    これまでの労働裁判例の蓄積により、解雇には合理的な理由が必要であるとのルールがあります(解雇権濫用法理)。上記の労働契約法第16条は、解雇権濫用法理を明文化したものです。
    したがって、解雇を検討すべき多くのケースでは、解雇に進む前に、まずはその従業員に対して退職勧奨を行い、従業員に退職届を提出して、自主的にやめてもらうことができないかを検討するべきです。解雇については常に「不当解雇トラブル」のリスクがあるため、自主的にやめてもらうことがリスクを生まない最善の策です。

    (2)解雇の種類の選択(普通解雇or懲戒解雇)

    解雇には大きく分けて「普通解雇」と「懲戒解雇」の2種類があり、どちらを選択するかによって、その後の「解雇方法」が変わってきます。結論から言えば、解雇理由に応じて以下のように判断するのが原則となります。

    (2)-1 普通解雇を選択するべきケース

    解雇の理由が従業員の問題行動や就業規則違反ではなく、能力不足や経営難にある場合は、普通解雇を選択するべきです。

    具体的には、①病気やけがによる欠勤を理由とする解雇、②能力不足、成績不良を理由とする解雇、③協調性の欠如を理由とする解雇、④経営難による人員整理を理由とする解雇、などです。

    (2)-2 懲戒解雇を選択するべきケース

    従業員の問題行動や就業規則違反に対する制裁として解雇する場合は、懲戒解雇を選択することが基本になります。具体的には以下のようなケースです。

    ①横領など業務に関する不正行為を理由とする解雇、②転勤の拒否など重要な業務命令に対する違反を理由とする解雇、③無断欠勤を理由とする解雇、④セクハラ・パワハラを行ったことを理由とする解雇、⑤経歴詐称を理由とする解雇などです。

    ただし、「懲戒解雇は、就業規則に記載されている懲戒解雇事由に該当しない限りできない」ことに注意しておく必要があります(労基法第89条9号)。就業規則に「どのようなケースで会社は従業員を懲戒解雇できるか」記載することが法律上義務付けられており、そのような記載を「懲戒解雇事由」といいます。そして、就業規則記載の懲戒解雇事由にあたらないときは、懲戒解雇はできません。懲戒解雇は「制裁として行われるものである」ことから、「どのような問題行動あるいは就業規則違反をした場合に制裁が科されるのか」をあらかじめ就業規則に記載しなければならないとされているのです。

    問題社員を解雇する際の注意点

    (1)就業規則の確認

    解雇を行うためには、解雇事由があらかじめ明示されていなくてはなりません。労働基準法および労働基準法施行規則では、就業規則と労働契約書(労働条件通知書)に解雇事由を記載しておくよう求めています(労基法第89条3号、労働基準法施行規則第5条1項4号)。したがって、就業規則に記載のない理由で解雇することはできません。

    (2)解雇理由が十分であるか

    前述のとおり、普通解雇、懲戒解雇いずれを選択するかによって、解雇理由が異なります。解雇理由については、就業規則に該当する解雇理由に当てはまるか、その内容を客観的に証明することが可能か、従業員本人は認めているか、といった観点から、解雇理由が十分であるか検討が必要となります。客観的に証明することができない理由であり、かつ、従業員本人が認めていないのであれば、後に不当解雇であると争われるリスクは高いです。したがって、後に従業員から争われた場合に、きちんと反論ができるだけの具体的な理由が必要となります。そういった意味で、従業員本人が理由とされた事実関係そのものに争いがない場合は、不当解雇であるとのリスクは相対的には小さくなるでしょう。それでも、不当解雇であると主張される可能性はありますが、その場合は、事実関係に争いのないことを前提として、解雇権濫用法理が当てはまるか(解雇処分が重すぎないか)、という評価の問題となります。

      なお、従業員は、退職証明書の発行を使用者に行うことができます(労基法22条1項)。その場合、退職の事由が解雇の場合はその理由を記載することになっているので、解雇理由が十分であると言えるかは、慎重に検討すべきでしょう。

    (3)解雇予告の実施

    労働基準法上、会社が従業員を解雇するときは、原則として「解雇日の30日以上前に予告すること」が義務付けられています(労基法第20条)。これに従い、解雇日の30日以上前に解雇の予告を従業員にしたうえで解雇日まで勤務してもらうのが「予告解雇」です。

    前述の通り、原則として解雇日の30日以上前の解雇予告が義務付けられていますが、30日分の賃金を払うことにより、事前の予告をしていなくてもその日に解雇することができます。このように、解雇を事前に予告せず、解雇を伝えた当日に解雇することを「即日解雇」といいます。このときに支払うことになる30日分の賃金のことを「解雇予告手当」といいます。

    このように即日解雇と予告解雇という2種類の解雇方法の違いを踏まえたうえで、いずれかを選択することになりますが、結論としては「特別な事情がない限り即日解雇が望ましい」といえます。理由としては、予告解雇をした場合、当該従業員は会社に対し負の感情を持つことがほとんどであり、他の従業員への悪影響等が考えられます。また、解雇日までの間に会社の機密情報を持ち出されるなどのリスクもあるでしょう。確かに、いきなり解雇してしまうと引き継ぎができないといいった問題も考えられますが、実際、予告解雇したケースで十分な引き継ぎ等を期待することは現実的には中々困難です。そもそも、引き継ぎなど行って欲しい業務がある場合は、解雇を選択すべきではなく、前述のとおり、退職勧奨を検討すべきでしょう。

    問題社員を解雇するための具体的な手順

    (1)事前警告と是正措置

    問題社員の類型によって対応が異なることがありますが、まずは①どのような問題行動が会社にとって問題となっているかの現状を把握し、②問題社員への警告・改善指導を行うべきです。当該従業員のどのような行動が問題となっているのか、正確に把握できなければ、その後の対応も決まりません。そして、正確に把握した後に、まずは改善を促すべく、口頭での注意、適切な処分を下す必要があります。

    (2)文書作成と記録保持の必要性

    前述の②問題社員への警告・改善指導は、文書で行うべきです。口頭で行った場合、いつ、どのような内容で行ったのか曖昧になってしまい、証拠が残らないためです。日報などで、必要な注意指導の記録を残すことでもよいでしょう。それでも改善しない場合は、訓告処分などを下す事も考えられます。

    重要なのは、解雇ありきでの指導にならないようにすることです。裁判所は、もっぱら解雇を目的とした指導等が行われていると判断した場合、その後に行われた解雇は不当(な目的の)解雇であると判断し、無効とする傾向にあります。

    (3)面談と最終通告

    再三の注意・指導を行い、軽微な懲戒処分をしても、改善が見られないという状況になってはじめて解雇が現実の選択肢に入ってきます。

    ただ、いきなり解雇となると、当該従業員が被る不利益も少なくないことから、強い抵抗に遭うかもしれません。そのため、前述のとおり、まずは退職勧奨を行い、合意退職の形で解決できないか話し合うべきです。

    なお、この「3」の段階で、弁護士に「解雇したいのですが」と相談が寄せられることが多いですが、その場合私は、解雇には相応のリスクがあることを踏まえ、退職勧奨を行うことを勧めています。

    (4)解雇通知書の発行と手続き

    従業員に解雇を言い渡した後に、解雇通知書を渡す必要があります。「解雇通知書」の書式は自由ですが、少なくとも解雇の日付、解雇理由の2点を記載する必要があります。

    その後は、最後の給与の支払いの手続き、備品の返却等解雇に伴う手続きを淡々と進めます。なお、解雇は常に後に不当解雇で紛争になるリスクが避けられないため、従業員が解雇に納得しない可能性が高い場合や、解雇にこだわる理由がない場合などは、この場面で自主都合退職を促すことも考えられます。

    解雇後の対応とトラブル回避

    (1)退職金の支給

    懲戒解雇の場合は退職金を不支給とする就業規則の定めがあることが多いですが、そのような定めていたとしても、退職金を不支給とすることについて、裁判所は極めて抑制的に考えています。したがって、解雇して退職金を不支給にしたとしても、後に退職金の不支給についてのみ争われる可能性もあります。

    (2)社会保険喪失手続

    会社は解雇日の翌日から「5日以内」に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所に提出する必要があります(健康保険法48条、厚生年金法施行規則22条)。解雇された従業員は、会社の健康保険から抜け、次の就職までの期間、国民健康保険に加入するか、あるいは「任意継続」といって解雇後も会社の健康保険に加入し続けるかのいずれかを選択することになります。

    そして、従業員が国民健康保険に加入するためには、会社がその従業員の健康保険の資格喪失手続を行い、退職者は会社の健康保険から脱退したことを証明する「資格喪失証明書」を区市町村に提出する必要があります。

    (3)離職票や退職証明書の発行

    離職票とは、ハローワーク(公共職業安定所)が離職者の失業保険の給付内容を定めるために発行する、離職者の在職時の給与や離職理由などが記載された書面です。離職者が失業保険(失業給付)を受給するときに必要となる書類の1つです。

    会社は解雇の日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」(従業員が退職して雇用保険の被保険者(加入者)でなくなったことを会社がハローワークに届け出るための文書)と「離職証明書」をハローワークに提出する必要があります。会社がハローワークに「離職証明書」を提出すると、ハローワークが会社に「離職票」を発行します。この場合、会社はハローワークから送られてきた離職票を解雇した従業員に交付する必要があります。

    問題社員の解雇に関して弁護士に相談すべき理由

    (1)問題社員の類型別の対応方法がわかる

    一口に問題社員といっても、前述のとおり能力不足、協調性不足等理由は様々であって、対応方法も異なります。弁護士に相談することにより、どのようなアプローチを取るべきか正確に把握することができます。

    (2)不当解雇で訴えられるリスクを回避する

    前述のとおり、解雇の問題は常に不当解雇のリスクがあります。不当解雇で訴えられることのないように、法的な観点からリスクを検討することができます。

    (3)円満退職に導くアドバイスができる

    問題社員対応には、状況の正確な把握、方針の策定、実際の行動といった、様々なプロセスを経る必要があり、そのプロセスの一つ一つに弁護士が関与し、法的観点からトラブルのリスクを回避し、問題社員対応を前進させるアドバイスが可能です。

    以上のとおり、問題社員でお悩みの際には、無用なトラブルが拡大する前に是非さいたまシティ法律事務所にご相談ください。

    顧問プラン表はこちらをご覧ください。

    以上

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    試用期間中の解雇を検討したい!不当解雇となるケースについて弁護士が解説

    試用期間中の解雇を検討したい!不当解雇となるケースについて弁護士が解説

    試用期間とは

    ⑴ 会社が従業員を採用した後、本採用前の一定期間、その従業員の業務適格性等をより正確に判断するための期間を「試用期間」といいます。

    会社が従業員を雇い入れる場合、採用面接だけでその従業員が会社の求める業務適性を有しているか見極めることは困難であり、試用期間を設けることは双方のミスマッチを防ぐ目的もあります。

    試用期間は就業規則で定められていることが多く、期間としては3ヶ月から6か月程度としている会社が多い印象です。

    ⑵ 試用期間中は、「解約権留保付きの雇用契約」が成立しているとされ、いずれにしろ雇用契約が成立していることに変わりはありません。

    試用期間中と言えども、労働基準法及び労働契約法の適用がある雇用契約が成立しているという意味では通常の雇用契約と同様であり、試用期間中の採用取り消しは「解雇」と同様に扱われます(最大判昭和48年12月12日・三菱樹脂事件参照))。稀に、試用期間を文字通りお試し期間と捉えて、試用期間中の従業員を会社が自由に解雇できると捉えている経営者の方を見かけることがありますが、そのような捉え方は明らかな誤りです。

    ⑶ なお、「試用期間中の解雇」については、文字通り、「試用期間中の解雇」と、「試用期間満了時の本採用拒否」の問題に分かれますので、以下では分けて説明します。

    試用期間中の解雇理由と注意点

       前述のとおり、試用期間中であっても雇用契約が成立していることに変わりなく、労働基準法、労働契約法等の労働法の適用を受けます。試用期間であるからといって解雇しやすいということはありません。試用期間中は、当該従業員の業務の適格性の有無を判断するための期間ですので、そのような判断は基本的に試用期間が終了した時に判断すべきであって、「試用期間の途中」に判断すべきものではないからです。

    なお,「試用期間の途中の解雇」が認められるには、試用期間を定めた合意に反して短縮するに等しく、能力・資質不足が顕著で改善の見込みがないという特別の事情が必要であるとする裁判例があります(東京高判平成21年9月15日・ニュース証券事件)。

    もっとも、事情によっては「試用期間の途中」でも解雇を検討せざるを得ない場面があるでしょう。以下、解雇を検討する際に,どのような点に留意すべきか見ていきます。

     ⑴ 期待していた能力がなく一定の成績を期待することができない

    試用期間中の解雇で問題となる多くのケースは、従業員の能力不足です。例えば、他社での業務経験など一定の能力を見込まれた中途採用者(即戦力)の場合、試用期間の途中で能力不足が明らかといえるような場合は、試用期間中の解雇が有効となる場合もあるでしょう。もっとも、経験者とはいっても会社ごとに業務の内容や業務の手順が異なるのが通常であり、試用期間中の従業員に対して十分な指導や改善機会を与えずに解雇した場合、会社の指導不足であるとして解雇は無効と判断されることもあるでしょう。

    一方で、未経験者や新卒採用者を前提に採用している場合、多少の能力不足では解雇することはできません。未経験者や新卒採用者は、雇い始めた当初仕事ができないのはむしろ当然であって、むしろ使用者側が指導や注意を行うことが求められます。したがって、ある程度の期間指導や注意を繰り返しても改善がされず、能力不足の程度も会社が許容できる範囲を超える場合にはじめて解雇を検討すべきといえます。

    なお、能力不足といえるかどうかについては、客観的な証拠や数値で他の社員と比較して明らかに劣っているかという観点で判断することが重要です。

     ⑵ 病気や怪我を理由とする解雇

        病気や怪我の理由が業務に起因する場合、その療養のための休業期間と療養のための休業期間の終了後30日間は、法律上解雇できません(労働基準法19条1項柱書)。

    業務に起因する病気や怪我とは、例えば、現場作業中に怪我をした場合や、長時間労働でうつ病になった場合などです。

    病気や怪我の理由が業務外のもの(私傷病)であったとしても、会社の就業規則に試用期間中の者でも休職させることができる規定があれば、まずは休職させて様子をみるべきです。休職規定があるのに休職をさせなかった場合は、その理由が問われることになるでしょう。

     したがって、休職規定がある場合には、休職させた上で復職の可否を検討し、最終的に解雇するかどうか判断するという手順を踏むべきです。

     ⑶ 勤怠不良

    試用期間の段階で遅刻・早退・欠勤を繰り返すなど社内の規律を守らないのであれば、本採用拒否の正当な理由にもなりそうですが、何回繰り返せば試用期間の途中に解雇が認められるといった決まったルールがあるわけではありません。また、試用期間中の欠勤が続いたとしても、それが業務を理由としたメンタル不調による出勤不能の場合は、「正当な理由」のある欠勤とされることもあるでしょう。したがって、遅刻や欠勤があった場合も、いきなり解雇を検討するのではなく、まずは理由をよく把握し、正当な理由に基づく欠勤等でないのであれば注意・指導を行い、それでも一向に改善されない状態が続くようであれば、解雇を検討すべきでしょう。

     ⑷ 協調性不足

    遅刻や欠勤などと同様、上司からの指示に反発したり、他の社員と頻繁にトラブルを起こすような社員は協調性が不足していると判断することがあるでしょう。ただし、このような場合でも、まずは当該従業員の言い分や事情を聞き、上司への反発や起こしたトラブルに理由が認められない場合は、その行為に対して注意・指導を行いましょう。注意・指導に対しても反発したり従わない場合は、解雇に正当な理由が認められやすくなります。

     ⑸ 経歴詐称

    経歴詐称は、「その前歴詐称が事前に発覚すれば、使用者は雇入契約を締結しなかったか、少なくとも同一条件では契約を締結しなかったであろうと認められ、かつ、客観的にみて、そのように認めるのを相当とする、前歴における、ある秘匿もしくは虚偽の表示」、すなわち、その事実を知っていれば採用していなかったといえるような「重要な部分」に詐称があった場合に解雇が認められます。

    重要な部分の詐称かどうかは、詐称の内容や当該従業員の職種などを考慮して具体的に判断されますが、例えば、学歴、職歴、犯罪歴などは「重要な部分」といえるのではないでしょうか。

    試用期間中の解雇のポイント

     ⑴ 「試用期間中の解雇」と「試用期間満了時の本採用拒否」の問題がある

       一概に試用期間中の解雇といっても、上記2つの問題があることに留意する必要があります。試用期間中の解雇のハードルは、前述のとおり通常の解雇の場合と比較して大きな差があるわけではなく、試用期間中だから解雇しやすいということではありません。一方で、「試用期間満了時の本採用拒否」の問題はやや特殊で,以下の裁判例でも述べられているとおり、本採用後の解雇と比較する限りでは、解雇は認められやすいとされています。

    ●三菱樹脂事件(最高裁昭和48年12月12日民集第27巻11号1536頁)

    (判旨)

    「それゆえ、右の留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきもの」であるが、「解約留保権の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当と是認されうる場合」にのみ許されるとしています。

    しかし、試用期間満了時の本採用拒否であっても、使用者側に自由裁量による解雇権が与えられているわけではありません。前記三菱樹脂最高裁判決では、

    「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務態度等により当初知ることができず、又は知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において・・・その者を当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが相当と認められる場合」

    に解雇が許されるとしています。したがって、試用期間満了時の本採用拒否についても、普通解雇に準ずるような準備とプロセスを経たうえで行うことが求められます。

    このように、試用期間満了による本採用拒否も、それが解雇であるが故に決して容易に行うことができるものではないことに留意する必要があります。以下では、試用期間満了による本採用拒否が有効とされた事例を紹介します。

    ●ブレーンベース事件(東京地裁平成13年12月25日判決)

      (事案)

       ⇒Xは、医療機器製造販売業を営むY社に、平成11年1月6日から雇用され、3ヶ月は試用期間であるとされていた。使用者は、Xがパソコンに精通している、営業活動の経験と能力を有することから採用することとした。ところがXはパソコンを満足に使うことができず(FAXもできない)、業務命令に従わない、重要な業務が行われる商品発表会の翌日に休暇を取るなどしたことから、YはXを解雇した(本採用拒否)。

     (理由)

    ⇒試用期間中の解雇は通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとしたうえで、一方、試用期間中の解雇といえども客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認される場合にのみ許されるのが相当であるところ、本事案においては、試用期間中の解雇に客観的に合理的な理由があり、有効と判断した。

    ●ゴールドマン・サックス・ジャパン・リミテッド事件(東京地裁平成31年2月25日判決)

     (事案)

       ⇒平成27年5月に,アナリストとして試用期間を3ヶ月として中途入社したが、入社当初からミスが目立ち、複数回面談が行われたが改善しなかった。そこで、平成27年10月10日付けで「試用期間対象者を社員として勤務させることが不適当であると決定した場合」に該当するとして解雇した(本採用拒否)。

    (理由)

    ⇒使用者はXを即戦力として採用し、Xもそのことを認識していること、Xのミスは複数かつ軽微なものとはいえず、複数回の指導が行われたものの改善には至らない。Xを採用するに至った経緯等踏まえても、解雇(本採用拒否)の手続きには問題があったとは認められない、と判示した。

     ⑵ 試用期間開始後14日以内の解雇であれば予告は不要である

    会社が従業員を解雇する場合、原則として30日前に従業員に解雇の予告をするか、30日以上の賃金(解雇予告手当)を支払って即日に解雇するかどちらかの手続きを行うこととなっています(労働基準法20条1項)。

    しかし、試用期間開始後14日以内に解雇する場合は、この解雇予告や解雇予告手当が不要となります(労働基準法21条4号)。試用期間が開始して14日を経過した後については、解雇予告もしくは解雇予告手当の支払いが必要になります。

     ⑶ 試用期間中であっても離職票の発行は必要

    試用期間中の解雇であっても、離職票の発行は原則必要になります。

    雇用保険制度は、従業員を雇用する全ての事業に適用され(雇用保険法5条1項)、そこで雇用される従業員は被保険者とされます。ただし、週の所定労働時間が20時間未満の人、同一事業主での雇用見込みが30日以内の人、短期または短時間で季節的に雇用される人、学生・生徒など厚生労働省令で定める人などは、雇用保険制度の適用対象から除外されています(雇用保険法6条)。

    したがって、雇用保険制度の適用対象となる被保険者が退職した場合には、試用期間の有無や退職の理由、雇用期間の長短に関わらず、事業主は資格喪失届と離職証明書を作成し、公共職業安定所(ハローワーク)に届け出て離職票(様式第6号)を退職者に交付しなければなりません。ただし、解雇された従業員が交付を希望しない場合(雇用保険施行規則第7条3項)には、離職票を交付する必要はありません

    試用期間中の解雇で不当解雇となる可能性があるもの

    特に、新卒採用社に対する能力不足を理由とする解雇は無効となる可能性が高いと言えます。新卒採用者やその業種について未経験を前提で採用したケースでは、ある程度仕事ができないことは致し方ないところであり、能力不足を理由とする解雇をするにはある程度の期間指導を行い、それでも改善の見込みが認められない場合にはじめて、解雇を検討することが無難です。

    一方、中途採用社員に関しては、能力に期待して採用している以上、求めていた能力に達していなければ解雇したいという使用者側の意向はもっともです。ただ、それでも、まずは指導や注意を会社側で行う必要があるでしょう。これらの指導や注意を一切行わない若しくは行っていたとしても行った証明ができないにもかかわらず解雇した場合、不当解雇となる可能性があります。なお、指導や注意は口頭で行ってもよいですが、前述のとおり指導や注意を行った証拠を残すために、書面で行うことも大事です。

    問題社員を解雇するべき理由

    現代社会では、会社の規模の大小にかかわらず、いわゆる「問題社員」はどこの会社にも存在している可能性があります。例えば、会社の指示に従わない社員、遅刻欠勤を繰り返す社員、能力に問題のある社員(ローパフォーマー)、協調性のない社員、あるいは社内で窃盗、横領行為等に及ぶ社員などです。問題社員の問題が顕在化すると、他の社員の退職、意欲の低下など、職場環境の悪化、生産効率の低下等を誘発することとなり、悪影響を及ぼしかねません。そのため、問題社員対応にあたっては、着地点を見据えたうえでの適切な対応を早期に図る必要があります。

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    まとめ

    さいたまシティ律事務所では、これまで数多くの交渉,労働審判,裁判を通じて労働問題や労務トラブルを解決してきた実績・経験を有しており、これまでの実績や経験を踏まえ企業の皆様にとって最善の解決を導くべく日々業務に励んでいます。

    試用期間中の従業員について,法的対応を検討されている経営者の皆様は、ぜひ一度、さいたまシティ法律事務所にご相談ください。

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    懲戒処分とは?種類・法的根拠・選択基準・手続きについて弁護士が分かりやすく解説

    懲戒処分とは?

     懲戒処分とは、企業が従業員の社内秩序違反行為(問題行動)に対して科す制裁罰のことをいいます。具体的には、譴責(けんせき)、訓告、戒告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇といった内容が就業規則で定められています。懲戒処分は、企業が企業秩序を維持・回復させるために不可欠な制度です。

     懲戒処分の目的は、問題行動を起こした本人に制裁を加えること並びに従業員全員に対し、懲戒処分を受けた従業員の問題行動が好ましくない行為であることを明確に示すことによって、企業秩序を維持回復させることにあります。

     懲戒処分は、企業秩序違反者に対し使用者が行う特別の制裁罰ですので、従業員10名以上の事業所が懲戒制度を設ける場合は就業規則にその内容を明記することが必要とされています。このように、就業規則に懲戒事由が明記かつ従業員に周知していなければ懲戒することはできず(労働基準法89条9号、労働契約法7条)、懲戒処分が可能である場合でも、「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効」とされる場合があり、懲戒権が無制限のものではないことが明確となっています(懲戒権濫用法理・最判平成15年10月10日、労働契約法第15条)

    懲戒処分の種類と基準

     前述のとおり、労働基準法は事業主が制裁の定めをする場合、「その種類及び程度に関する時効」を就業規則で定めなければならないとしています(労基法89条9号)。懲戒処分の内容は、一般的には以下の6種類が挙げられます。

    ⑴ 譴責(けんせき)・訓告・戒告

     譴責(けんせき)は、文書で厳重注意し、従業員の将来を戒める懲戒処分です。通常は始末書を提出させます。訓告も同様の意味内容で用いられることがありますが、主に公務員において設けられている制度です。戒告は、始末書の提出を伴わない場合が多いようです。

     これらはいずれも労基法の概念ではないため、企業によって意味内容が異なることがありますが、いずれも概ね同じ意味であると考えて差し支えないでしょう。懲戒処分としては最も軽いものであり、従業員に対する「指導」を主な内容とし、経済的な不利益を伴うものではありません。

    ⑵ 減給

     従業員の給与を減額する処分です。減給は、労働者保護の立場から法律上の限度額が設けられており、「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」(労基法91条)とされています。

     要するに、1回の問題行動に対する減給処分は、1日分の給与額の半額が限度額であることを意味します。

     過去、労基法91条の後段「総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」のみを捉えて、1回の問題行動を対象に、1ヶ月分の賃金の10分の1を減給としたケースに遭遇したことがありますが、このような減給は明らかな違法です。

    ⑶ 出勤停止

     問題行動に対する制裁として、従業員に一定期間出勤を禁じ、その期間の給与を無給とする処分です。出勤停止となる問題行動の典型としては、会社内での暴力行為やハラスメント行為などがあげられます。例えば、30日の出勤停止という場合、30日分の給与が支給されないことになるため(出勤停止の日数のカウントは労働日のみです)出勤停止は減給処分よりも本人が受ける経済的制裁の程度が大きくなります。

     なお、出勤停止期間中無休となることは、制裁としての出勤停止の当然の結果であるため、労基法91条の制限を受けることはありません(昭和23年7月3日基収第2177号)。出勤停止の期間は法律上の上限はありませんが、通常は就業規則で上限が決められています。7日や10日程度とされるケースが多いようです。

     なお、出勤停止と自宅待機命令の違いが問題となることがよくありますが、出勤停止は懲戒処分であるのに対し、自宅待機は業務命令であり、自宅待機期間中も原則として給与が支払われるという点で違いがあります。自宅待機命令は、問題行動が起こった際、当該従業員を出社させるのは不適当であり、問題行動を調査する必要がある場合などに命じられます。

    ⑷ 降格

     従業員の役職や資格を下位のものに引き下げる懲戒処分です。降格の懲戒処分の場合は、出勤停止処分よりも、さらに当該従業員が受ける経済的な影響は大きくなります。その理由は、降格すると役職給などが下がるため、給与が減るためです。

     出勤停止処分の場合、出勤停止の期間が終われば元の給与に戻りますが、降格処分で役職手当が下がった場合は、今後も下がった給与が支給されることになります。

    ⑸ 諭旨解雇(諭旨退職)

     従業員に対して退職届の提出を勧告し、退職届を提出しない場合は懲戒解雇する懲戒処分です。

     諭旨解雇は、懲戒解雇が従業員にとって不利益が大きいことから、退職届提出の機会を与えるものです。企業によっては諭旨解雇若しくは諭旨退職と呼ばれることもありますが、基本的には同じ意味でしょう。

    ⑹ 懲戒解雇

     懲戒事由があることを理由に従業員を解雇する懲戒処分です。懲戒解雇の場合、退職金の全部または一部が支払われないと定められている場合が多く、解雇予告手当も通常は支払われないでしょう。

     ⑸の諭旨解雇または諭旨退職の場合は、退職金について全額支払うとしている会社が多くなっていますが、この点が諭旨解雇と懲戒解雇の大きな違いです。また、諭旨解雇の場合は当該従業員に退職届を提出させるという点で、後の紛争の予防にも資するという意味があるようです。

    懲戒処分の対象となるケース・具体例(懲戒事由)

    ⑴ 勤怠不良(無断欠勤、遅刻、早退など)

     勤怠不良とは、遅刻や早退、私用外出、欠勤などこれらを総称する概念です。勤怠不良とはいっても、様々な理由が考えられるため、これらの事由があったからといって直ちに懲戒処分の対象となるかはケースごとに判断する必要があります。

     勤怠不良は、それが繰り返される場合でも、通常、まずは軽微な懲戒処分から始めるべきですが、一般的には、2週間の無断欠勤で懲戒解雇とする就業規則が多いように見受けられます。

    ⑵ 機密情報の漏洩

     機密情報の漏洩については、それが企業におって重要な情報であり、かつ事業主の損害または業務の正常な運営に多大なる支障をきたすという結果をもたらした場合は、懲戒解雇とすることは十分に考えられます。

    ⑶ ハラスメント行為

     パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニテイハラスメント等ハラスメントの種類を問わず、就業規則にハラスメント行為を懲戒処分の対象と定められているケースが多いと思われます。

     ハラスメント行為の内容、被害者の意向、過去の懲戒歴等を踏まえてどの懲戒処分を選択するか検討することになります。

    ⑷ 会社の金員を横領するなどの業務に関連した犯罪行為

     業務に関連した横領、詐欺行為などは原則として懲戒解雇事由とされているケースが多いと思われます。

    ⑸ その他の就業規則違反

     経歴詐称、職務懈怠、業務命令違反、服務規律違反等が考えられます。また、業務とは直接関連のない、私生活上の刑事事件(強制わいせつ、痴漢、詐欺、酒気帯び運転、薬物所持・使用)を起こした場合、「会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければ」懲戒解雇できない(最高裁昭和49年3月15日判決)とされています。

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    懲戒処分を実施する手順

     大まかな流れとして、①就業規則の確認(有効な懲戒処分の根拠規定が存在するのか)、②懲戒処分対象行為の記録、証拠の収集(第三者からの聞き取り等の事実確認)、③対象者への弁明の機会の付与、④処分内容の決定、⑤懲戒処分通知書の交付、という流れを経ることになります。

     ③の本人への弁明の機会は必ず付与する必要があります。弁明の機会の付与の有無は、後日懲戒処分の有効性が争われたときには必ず問題となり、付与していなければ懲戒処分の有効性に疑義が生じかねません。 

     また、就業規則において、懲戒処分をするには「懲罰委員会」や「賞罰委員会」を開催するなどと明記されている場合には、これを開催したうえで懲戒処分を決定する必要があります。

     そして、懲戒処分は必ず「懲戒処分通知書」といった書面によって行います。口頭による処分では、それが従業員のどのような行為に対する処分なのか、あるいは単なる指導・注意なのか制裁罰としての懲戒処分なのか、など、あいまいな点を残すことになります。

     過去、長年注意指導してきた従業員を懲戒解雇したいという相談を受けることがありますが、残念ながらその注意指導に関する書面が残っていることは稀で、経営者としては訓告処分のつもりであったとしても、その文書さえ残っていないケースが多いです。懲戒処分については後々事実関係が争われることが多いため、「いつ、どこで、誰が、何を、どうした」という5W1Hを特定した文書を作成することが不可欠です。

     懲戒処分を行った場合、規律違反によって乱れた企業秩序の維持・再発防止のためにも、公開を必要とする場面は想定されるところではあります。しかし、仮に公開するにしても、客観的事実のみを公表し、氏名は記載しない、外部への公開はしない、といったことが求められます。氏名を記載して公表した場合はプライバシー侵害、懲戒処分の前提となった事実関係に誤りがあった場合は、名誉毀損の問題となりうるので、公表を行う場合は細心の注意が必要です。

     なお、懲戒解雇の場合は退職金の不支給について定めているケースが多いと思われます。ただし、就業規則に不支給の定めがあっても、裁判所は、退職金は在籍中の功労に報いる功労報償的性質だけでなく、賃金の後払いの性質ももつものとして、「当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為」(大阪地判平成21年3月30日など)がある場合に限り不支給を認めるなど、懲戒解雇が有効であっても必ずしも全額の退職金の不支給が認められるわけではないことは留意する必要があります。

    懲戒処分の有効性と注意点

     前述のとおり、懲戒処分を行いうる事情が認められるとしても、適正な手続きを踏まなければその懲戒処分そのものが違法となることがあります。

     懲戒は就業規則に書いてあることしかできません。しかし、あらゆる懲戒事由をすべて列挙してあらかじめ記載することは困難であるため、最後に「その他この規則および諸規定に違反し、または前各号に準ずる行為を行ったとき」などの包括条項を定めておくなどの必要もあります。この包括規定があれば、懲戒事由が就業規則に定められていないから処分できない、ということはまず起きないでしょう。

     また、労働契約法第15条において、「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効」とされています(懲戒権濫用法理)。要するに、当該懲戒事由と懲戒処分とのバランスが求められるのであって、例えば1回の暴言で即懲戒解雇とはいかないというわけです。

     さらに、1回の問題行動に対し、2回懲戒処分を行うことはできません(二重処罰の禁止)したがって、処分歴のある従業員に再度懲戒処分するに際しては、過去の問題行動を今回の懲戒処分の対象としないように留意しなければなりません。

     懲戒処分のいわゆる「相場」の参考としては、一般社団法人労務行政研究所「企業における懲戒制度の最新実態」や人事院「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職-68 最終改正令和2年4月1日職審―131)などが参考になるでしょう。

    よくある質問

    Q 懲戒処分を行った後に訴訟リスクを最小限にする方法はありますか。

     既に懲戒処分を行った段階であれば、無効を主張されるか否かは当該従業員次第です。しかし、処分後に事実関係の誤りや手続き違反などが見つかった場合は、懲戒処分を撤回するなどして、自発的に紛争の可能性を回避することも考えられます(ただし、懲戒解雇の場合は民法540条第2項により使用者側の意向で一方的に撤回することはできません)

    Q 懲戒処分を決定する前に従業員を出勤停止にすることは可能ですか

     懲戒処分としての出勤停止を先に行えば、その後懲戒処分を行うことは二重処罰の禁止に該当し、行うことはできません。

    Q 懲戒処分対象者の情報を社内で公表することは可能ですか

     企業秩序の維持・再発防止のために公開を必要とする事は考えられますが、客観的事実のみの公表にとどめ、氏名を公開しない、取引先には通知しない、被害者がいる場合の配慮、公表の期間等に留意する必要があります。公表によって名誉毀損、プライバシー侵害などの新たな法律問題を生む可能性があるためです。

    Q 出勤停止中に賞与支給日が到来した場合、賞与を支払わなくても問題ありませんか

     たまたま出勤停止期間中に賞与支給日が到来したことをもって不支給すとすることは原則として認められません。また、過去出勤停止処分を受けた者への賞与を不支給とした労働協約の定めの有効性が争われた事例で、裁判所は当該定めを無効と判断しています。

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    【社労士向け勉強会開催のご報告】問題社員対応~非違行為を行う社員編~

    2024年2月14日(水)にて、社労士向け勉強会「問題社員対応~非違行為を行う社員~」を埼玉会館にて開催いたしました。講座が終了したのちも10分以上質疑応答にて様々な場面での対応方法についての議論が交わされるなど、大変活発な勉強会となりました。

    お忙しい中ご参加いただきました先生方、誠にありがとうございました。

    勉強会の内容

    今回の勉強会では、下記のような内容を中心に、さいたまシティ法律事務所 弁護士 荒生祐樹が講師として、解説を行いました。

    1. 労務問題の最新動向
    2. 従業員の非違行為とは
    3. 非違行為がよく問題になる場面について
    4. 実際の判例と適切な対処法

    勉強会参加特典

    勉強会にご参加いただきました先生方は

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    時期:2024年5月

    テーマ:ハラスメントについて(変更の可能性有)

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    会社役員を誹謗中傷する社員を退職勧奨によって退職させることに成功した事例

    相談概要

    相談企業のエリア北関東
    相談企業の業種建設業
    相談企業の従業員規模100名程度
    相談のジャンル問題社員対応,懲戒処分
    争点誹謗中傷への対応,退職勧奨

    相談内容

    A社の役員Xが,パワハラやセクハラを行っているとの内容の口コミが匿名掲示板で投稿されました。投稿者の手がかりはなく,一方でA社には事実確認の問い合わせが殺到し,既存の取引先もA社に対し疑念を抱くようになったため,すみやかに口コミを削除し,投稿者を突き止める必要がありました。

    解決までの流れ

    投稿から1週間程度で相談を受け,すぐに受任し,裁判所に投稿記事の削除及び発信者情報の開示を求め,口コミの投稿者はA社の現役従業員であるYであったことが判明しました。また,投稿の削除も認められ,すみやかに削除されました。Yに口コミを投稿したのか確認しましたが,曖昧な回答に終始し,はっきりと認めず,一方で,役員Xに対する個人的な恨みをほのめかしていました。役員Xは,会社の風評被害が甚大であることから従業員Yの早期解雇を主張しましたが,従業員Yは非を認めないため,場合によっては解雇無効を争われる可能性もありました。口コミの内容や取引先等への悪影響の程度からすれば,解雇したとしても有効性は維持できると考えられるケースでしたが,紛争が長引くことにメリットはなかったため,従業員Yに退職勧奨を実施し,退職条件を詳細に詰めたうえで,従業員Yを合意により退職させることになりました。

    担当した所感

    本件は,当初会社役員に対する誹謗中傷が問題となりましたが,投稿者が現役従業員だったことが判明したことにより,会社の労働問題に発展したケースです。匿名掲示板の口コミは,原則として裁判をしなければ投稿者の特定ははできません。特定できる期間も限られています。したがって,裁判を行って投稿者の特定まで行うか否かを,早急に決定する必要があります。

    次に,投稿者が従業員であったことが判明した場合,どのような対応を行うか問題となります。このケースでは,役員Xひいては会社そのものの風評を害したということで,就業規則の懲戒事由に該当することは明らかでした。現実問題としても,会社にマイナスの口コミを行う従業員を雇い続けることはできないでしょう。

    一方で,本件のようなケースで解雇が法的に有効と言えるかは別問題です。また,解雇は有効であったとしても,従業員Yが解雇を争うことにより,解決まで何年もかかり,時間や費用を浪費してしまうことも考えられます。本件では,解雇に固執せず,当該従業員の退職を最優先課題とした結果,退職勧奨によってすみやかに退職させること及び会社にとって有利な条件で退職させることに成功しました。

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