風評被害・誹謗中傷を行う従業員に対する対応とは?企業側の対応について労務に精通した弁護士が解説

風評被害・誹謗中傷を行う従業員に対する対応とは?企業側の対応について労務に精通した弁護士が解説

風評被害とは

 風評被害とは,「根拠の不確かな噂や科学的根拠に基づかないデマ等によって被害を受けること」を意味します。風評被害は法的な用語ではないため,何を持って風評被害に該当すると判断するか難しい場面が少なくありません。法的な意味での名誉毀損や信用毀損,侮辱といった内容に当てはまらなければ,法的対応を取ることも困難です。しかし,法的な問題に至っているか否かは別として,「風評被害」を放置しておくことにより,刻一日と会社の評判が毀損されることとなりうるため,風評被害が生じていることを把握したらすみやかに対応しなければならず,風評被害対応にあたっては,弁護士を通じて適切な対応を早期に図る必要があります。

 

風評被害・誹謗中傷対応でできることは何か

①自社のホームページでの反論

 インターネット上での虚偽の内容の投稿によって風評被害・誹謗中傷が広まっているような場合,投稿が事実に反していることを,自社のホームページなどで主張することが必要です。風評被害・誹謗中傷が生じているのにもかかわらず何のアクションも取らないと,事実だから何も言えないのだと思われてしまう可能性があります。消費者を安心させるためにも,会社として風評被害・誹謗中傷に対し,どのような対応をしているか等,正しい情報を発信する必要があります。

②投稿の削除

 掲載された媒体のサイト管理者等に投稿の削除を依頼しましょう。サイト管理者に対し,メールや所定の削除依頼フォームから請求する方法があります。このようなオンラインによる方法のほかに,プロバイダ責任制限法に基づいた送信防止措置依頼書を送付して削除を求める方法もあります。

③発信者情報開示請求

 発信者情報開示請求を行うことにより,インターネット上で行われた投稿を投稿した者を特定し,投稿者に対し,会社が被った社会的評価の低下,信用毀損により生じた損害の賠償を追及する事が考えられます。サイトや掲示板の管理者,プロバイダに対し発信者情報開示請求を行うことで,誰が投稿したのか特定できるかもしれません。この請求が認められれば,最終的に投稿者の氏名・住所等の情報を把握することができます。

④警察への相談

 投稿が事業者の名誉を毀損する,信用を毀損することが明らかと言える場合は,刑事事件としての立件も考えられるため,警察への被害相談を行うべきです。

 

弁護士が風評被害・誹謗中傷対応としてできること

 上記②投稿の削除及び③発信者情報開示請求は,法的な対応が必要となるため,事業者による対応はかなり難しいものがあります。投稿の削除について,任意の削除請求で拒否されてしまった場合などは削除仮処分という裁判による方法がありますが,「仮処分」という裁判手続きとなるため,弁護士による対応は不可欠です。発信者情報開示請求に関しても,令和4年10月にプロバイダ責任制限法が改正され,従前に比べると使いやすい制度となりましたが,依然として開示までの手続きは複雑であり,本人対応は極めて困難といえます。④の警察への相談にあたっても,刑法の理解が前提となること,加えて,事実関係を整理し・立証の準備を行う必要があるため,弁護士に委ねる方が専門的な知識を背景とした対応をしてもらうことができます。

 このように,風評被害・誹謗中傷対応にあたっては,弁護士が専門的な知識・経験を背景として対応することが不可欠です。

 

弁護士に依頼するメリットと依頼した場合の費用相場

 弁護士に依頼することにより,専門的な内容の風評被害対応について,一手に任せることができます。

⑴ 削除

 任意での削除請求で約10万円,仮処分による削除の場合は約20万~30万円くらいです。

⑵ 発信者情報開示請求

 令和4年10月の改正プロバイダ責任制限方に基づく発信者情報開示命令を行う場合,投稿されたサイトの管理者及び経由プロバイダに対する2回の申立を行う必要があります。費用は,1回の申立てあたり約20万円です。2回申し立てることになるので,合計約40万円です。

⑶ 刑事告訴

 着手金が20万~30万円(税別),報酬金が20万~30万円(税別)程度です。

 

当事務所では風評被害・誹謗中傷対応を受け付けています

 当事務所では,プロバイダ責任制限法の改正以前から企業の風評被害・誹謗中傷について積極的に取り組んでおり,近時においても従業員による事実に反する投稿が問題となったケースで,最終的には和解によって解決に至ったこともあります。  

 風評被害・誹謗中傷を放置することは企業にとって深刻な結果を招き,取り返しのつかない事態になることがありうるため,決して放置することが許されない問題です。一方で,削除・発信者情報開示請求を専門的に取り扱う弁護士はまだまだ多くはないという実情があります。

 さいたまシティ法律事務所では,豊富な風評被害・誹謗中傷対策の経験のもと,どのような対応を取るべきか,成功の見通しなどについて,個々のケースに応じてアドバイスをご提供することが可能です。これにより,トラブルのリスクを最小限にとどめることが可能です。

 また,すでに起きてしまった風評被害・誹謗中傷の対応だけではなく,将来のリスク回避のために現在起きている問題を二度と生じさせないように取り組むことが経営強化につながります。さいたまシティ法律事務所では,問題発生の根本を探求し,就業規則の整備・改善や,実際上の労務運用までリスク回避策を積極的に提案しています。現実に起きた問題の対応よりも,問題が発生しない土壌を作ることが,会社や従業員にとって何より望ましいものであり,経営の安定化につながります。

 風評被害・誹謗中傷でお悩みの際には,無用なトラブルが拡大する前に是非ご相談ください。

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    Last Updated on 2024年10月16日 by roumu.saitamacity-law

    この記事の執筆者:代表弁護士 荒生祐樹

    さいたまシティ法律事務所では、経営者の皆様の立場に身を置き、紛争の予防を第一の課題として、従業員の採用から退職までのリスク予防、雇用環境整備への助言等、近時の労働環境の変化を踏まえた上での労務顧問サービス(経営側)を提供しています。労働問題は、現在大きな転換点を迎えています。企業の実情に応じたリーガルサービスの提供に努め、皆様の企業の今後ますますの成長、発展に貢献していきたいと思います。

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    会社役員を誹謗中傷する社員を退職勧奨によって退職させることに成功した事例

    相談概要

    相談企業のエリア北関東
    相談企業の業種建設業
    相談企業の従業員規模100名程度
    相談のジャンル問題社員対応,懲戒処分
    争点誹謗中傷への対応,退職勧奨

    相談内容

    A社の役員Xが,パワハラやセクハラを行っているとの内容の口コミが匿名掲示板で投稿されました。投稿者の手がかりはなく,一方でA社には事実確認の問い合わせが殺到し,既存の取引先もA社に対し疑念を抱くようになったため,すみやかに口コミを削除し,投稿者を突き止める必要がありました。

    解決までの流れ

    投稿から1週間程度で相談を受け,すぐに受任し,裁判所に投稿記事の削除及び発信者情報の開示を求め,口コミの投稿者はA社の現役従業員であるYであったことが判明しました。また,投稿の削除も認められ,すみやかに削除されました。Yに口コミを投稿したのか確認しましたが,曖昧な回答に終始し,はっきりと認めず,一方で,役員Xに対する個人的な恨みをほのめかしていました。役員Xは,会社の風評被害が甚大であることから従業員Yの早期解雇を主張しましたが,従業員Yは非を認めないため,場合によっては解雇無効を争われる可能性もありました。口コミの内容や取引先等への悪影響の程度からすれば,解雇したとしても有効性は維持できると考えられるケースでしたが,紛争が長引くことにメリットはなかったため,従業員Yに退職勧奨を実施し,退職条件を詳細に詰めたうえで,従業員Yを合意により退職させることになりました。

    担当した所感

    本件は,当初会社役員に対する誹謗中傷が問題となりましたが,投稿者が現役従業員だったことが判明したことにより,会社の労働問題に発展したケースです。匿名掲示板の口コミは,原則として裁判をしなければ投稿者の特定ははできません。特定できる期間も限られています。したがって,裁判を行って投稿者の特定まで行うか否かを,早急に決定する必要があります。

    次に,投稿者が従業員であったことが判明した場合,どのような対応を行うか問題となります。このケースでは,役員Xひいては会社そのものの風評を害したということで,就業規則の懲戒事由に該当することは明らかでした。現実問題としても,会社にマイナスの口コミを行う従業員を雇い続けることはできないでしょう。

    一方で,本件のようなケースで解雇が法的に有効と言えるかは別問題です。また,解雇は有効であったとしても,従業員Yが解雇を争うことにより,解決まで何年もかかり,時間や費用を浪費してしまうことも考えられます。本件では,解雇に固執せず,当該従業員の退職を最優先課題とした結果,退職勧奨によってすみやかに退職させること及び会社にとって有利な条件で退職させることに成功しました。

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