勤務態度が悪い・職場のルールを守らない社員にお困りではないですか?
無断欠勤や遅刻、職務放棄など職務怠慢を繰り返す社員、職場のルールを守らない社員にお困りではないでしょうか。このような社員を放置した場合、企業には極めて重大な支障が生じます。
勤務態度の悪い社員・ルールを守らない社員を放置してはいけない理由
無断欠勤や遅刻、職務放棄など職務怠慢な社員等を放置すると、他の社員の労働時間・負担が増える、他の社員のモチベーションを低下させる、モチベーションが低下した社員が退職してしまうといったように、問題社員が存在することにより、他の社員への悪影響は計り知れないものがあります。また、会社が対応を放置する=容認と捉えられかねず、ローパフォーマー社員からモンスター社員化するおそれがあります。放置していると注意指導の証拠も残らず、あとで解雇したいと考えても、会社で必要な指導教育を果たしていないということで解雇は無効となる可能性が極めて高いです。
実際、当事務所に相談に訪れる会社担当者の方が問題社員の対応を求めるのは、「他の社員への悪影響」といった理由が最も大きいと言っても過言ではありません。従業員は会社の大事な財産ですから、他の従業員に悪影響を与えるということは、会社の生産性の低下、ひいては会社組織そのものの崩壊につながりかねないと言えます。真面目でやる気のある社員が損をするような職場であってはなりません。
勤務態度の悪い社員・ルールを守らない社員とは?どのような行為が問題となるのか
勤務態度の悪い社員・ルールを守らない社員として、無断欠勤や遅刻、職務放棄がその典型とされていますが、もう少し具体的に見ると、以下のような従業員もよく見受けられるところです。
1 業務時間中に居眠りを繰り返す従業員
2 自分の主張に固執し、会社の注意指導を受け入れない従業員
3 他の従業員に高圧的、攻撃的な態度をとりトラブルを発生させる従業員
4 積極性が欠如し、得意な仕事以外は取り組まない従業員
勤務態度の悪い・ルールを守らない社員への対応方法
1 解雇は極めて困難であること
日本では、従業員の解雇は極めて厳格な法規制が施されており、解雇することは極めて困難です。
特に、勤務態度不良の従業員・会社の命令や指示に従わない・違反する社員(会社のルールを守らない)に関しては、その不良の態度やルールを守らないその態度の印象が強く残る一方で、その「内容」を記録に残すことは難しいものです。記録に残す方法としては、指導や注意を行うことですが、口頭での注意のみで書面として残っていなければ、後になってその事実が争われた場合、立証することは困難です。
(解雇) 第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 |
これまでの労働裁判例の蓄積により、解雇には合理的な理由が必要であるとのルールができあがりました(解雇権濫用法理)。上記の労働契約法第16条は、解雇権濫用法理を明文化したものです。解雇が認められるには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められます。
2 解雇の有効性を左右する「客観的に合理的な理由」とは
「客観的に合理的な理由」としては、⑴ 労働者の労務提供の不能や労働能力又は適格性の欠如・喪失、⑵ 労働者の規律違反(経歴詐称、職務懈怠、業務命令違背、業務妨害、職務規律違背)、⑶ 経営上の必要性に基づく理由、⑷ ユニオン・ショップ規定に基づく組合の解雇要求といった内容が典型的な内容として挙げられます(菅野和男「労働法」第十二版・786頁)
3 社会通念上相当と認められるかどうか
社会通念上の相当性とは、労働者が行った行為や状況に照らして、相当な処分といえるか(バランスを欠いていないか)ということを意味します。例えば、軽微な就業規則違反を理由にいきなり解雇したり、これまで一度も懲戒処分を受けたことがなかったり、必要な注意処分や指導教育といった段階を踏まず、いきなり解雇処分としたような場合は、労働者が行った非違行為と解雇とのバランスを欠いているとし、社会通念上の相当性が認められないと判断されることになります。
4 小括
解雇を検討できる場面であっても、会社の法的リスクを最小限にし、また、トラブルを長引かせないようにするためには、解雇は最後の手段ととらえ、まずは退職勧奨により合意による退職を目指すことをおすすめします。従業員を解雇してしまうと、後で不当解雇として訴えられるリスクがあり、その場合、万一敗訴すれば多額の金銭支払い(バックペイ)を命じられます。
実際にあった問題社員への対応事例
実際に勤務態度やルールを守らない点を理由として解雇処分を下したところ、その有効性が争いになり裁判になった事例は最近でも複数あります。日本では解雇は認められにくいことは前述のとおりですが、それでも手順を踏んで対応したことにより解雇が有効となったケースも見られます。
1 勤務中の居眠りや飲酒を繰り返す従業員の解雇が有効とされたケース
糖尿病が原因でアルコール分解能力が低く、酒に酔った状態で出勤をしていた従業員を解雇した問題で、解雇された従業員が解雇は違法であるとして損害賠償請求を求めて提訴しました。勤務中の居眠りや無断欠勤、従業員や取引先からの苦情もありました。
当該従業員の勤務態度は、正常な職場機能や秩序を乱すものであり、社員本人も勤務態度を改める見込みが乏しかったとして会社規定の解雇理由には該当し解雇はやむを得ないととして、最高裁で破棄自判となり、解雇は有効とされました(小野リース事件(最高裁判所第三小法廷平成22年5月25日判決)
2 上司の指示を聞き入れない社員の解雇が有効とされたケース
一方的な休職や復職を繰り返し、作業放置や報告なしでの帰宅を行ったとして、従業員を解雇した内容で、その有効性が争われました。裁判所は、上司などの話を一向に受け入れず、改善する姿勢が見られないとの理由から、普通解雇が有効だと判示しました(東京地裁立川支部平成30年3月28日)。なお、この裁判は上記内容だけではなく、当該従業員が、職場内において、再三上司からボイスレコーダーを用いた録音を止めるよう業務命令を受けていたにもかかわらず録音を止めなかったといった、業務命令違反も解雇理由となっています。
弁護士による問題社員の対応
勤務態度不良・ルールを守らない従業員に対しては、ヒアリングを実施した上で、まずは口頭で注意・指導を行い、改善されない場合には、書面による厳重な注意指導を行わなければなりません。書面による厳重注意を行っても改善されない場合には、懲戒処分を検討することになります。その場合でも、最初の懲戒処分は最も軽い譴責とし、改善がなければ徐々に重い処分とします。遅刻や欠勤が理由となり、取引先との取引が停止するなど、企業側に重大な損害が発生したような場合には、最初から重い処分を課すことも選択肢となります。
その後も改善が見られず、その都度注意指導や懲戒処分を繰り返し行ってもなお、改善が見られない場合には、退職勧奨の上解雇処分を選択することもあり得ます。
弁護士への相談の重要性
以上のとおり、職場規律違反・勤務態度不良の社員を放置することは会社にとって深刻な結果を招き、他の社員の意欲等に大きく影響することから、放置することが許されない問題であると言えます。問題社員対応にあたって重要なのは、従業員の問題行動への注意・指導のプロセスであり、これができていないと、その後どのような対応方針を取ったとしてもうまくいかず、逆に、無用な紛争を招いてしまうことがあります。
さいたまシティ法律事務所では、指導・改善、懲戒処分、退職勧奨、場合によっては解雇に至るまでのスキームを個々のケースに応じてアドバイスをご提供することが可能です。これにより、トラブルのリスクを最小限にとどめることが可能です。
また、すでに起きてしまった労働問題への対応だけではなく、将来のリスク回避のために現在起きている問題を二度と生じさせないように取り組むことが経営強化につながります。さいたまシティ法律事務所では、問題発生の根本を探求し、就業規則の整備・改善や、実際上の労務運用までリスク回避策を積極的に提案しています。問題社員の対応よりも、問題が発生しない土壌を作ることが、会社や従業員にとって何より望ましいものであり、経営の安定化につながります。
ローパフォーマー社員の対応でお悩みの方はさいたまシティ法律事務所までご相談ください。

Last Updated on 2025年6月18日 by roumu.saitamacity-law
![]() この記事の執筆者:代表弁護士 荒生祐樹 さいたまシティ法律事務所では、経営者の皆様の立場に身を置き、紛争の予防を第一の課題として、従業員の採用から退職までのリスク予防、雇用環境整備への助言等、近時の労働環境の変化を踏まえた上での労務顧問サービス(経営側)を提供しています。労働問題は、現在大きな転換点を迎えています。企業の実情に応じたリーガルサービスの提供に努め、皆様の企業の今後ますますの成長、発展に貢献していきたいと思います。 |