企業側の労働審判対応とは?
労働審判手続は,解雇や給料の未払いなどの個々の労働者と事業者との間の労使トラブルを,原則3回の期日で,その実情に即し迅速・適正かつ実効的に解決するための手続きです。労働者とのトラブルを早期に解決したいとの意向を有している企業にとっては,早期解決に資するものであり,有益な手続きであると言えます。
一方で,労働審判は申立てから原則40日で第1回審判手続期日が開かれるため(年末年始等を挟む場合は60日程度の間隔が空く場合があります),企業側にとってのスケジュールは極めてタイトなものになります。また,原則3回の期日ではあるものの,事実上,最初の期日で裁判所が心証を形成することがほとんどであり,1回目の期日で最終的な結論を求められ,2回目以降の期日は和解のための調整を行う期日として位置づけられることが少なくありません。したがって,一発勝負の側面があると言えます。
さいたまシティ法律事務所では,使用者側での労働審判手続きの豊富な経験をもとに,労働審判手続を通じて労働者との紛争を解決に導きます。
企業側の労働審判対応における3つのポイント
①迅速な手続き
原則として3回以内の期日で審理を終えることになっているため,迅速な解決が期待できます。裁判所の統計によると,平成18年から令和3年までに終了した労働審判事件について,平均審理期間は80.6日であり,67.6%の事件が申し立てられてから3ヶ月以内に終了しています(裁判所HP・https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/roudousinpan/index.html)
早期の解決が期待できる一方で,前述のとおり企業側にとっては迅速な対応・判断が求められます。
②事案の実情に即した柔軟な解決
労働審判は,労働者・使用者のいずれの主張に分があるか,という観点のみならず,話し合い(調停)による合意の成立を探り,解決を目指す制度です。話し合いがまとまらない場合は,裁判所の心証形成に基づいた審判または訴訟に移行します。
③労働関係の専門家による関与
労働審判は,裁判官1名に,労働審判員2名で組織する労働審判委員会によって非公開で行われます。労働審判員は,使用者側,労働者側から1名ずつ参加し,それぞれの立場から審理・判断に加わります。
弁護士による労働審判対応
前述のとおり,労働審判は申立てがされてから第1回審判期日,そして結論が出るまでのスケジュールが短いため,どのような方針で審判に臨むか(どこまでなら譲歩できて,どこからは譲歩できないラインなのか等の線引き),何をどこまで主張するか,どういった証拠(書証)を提出するかなど,当初の段階で立案する戦略によって労働審判の成否が決まると言っても過言ではありません。戦略の立案にあたっては,当然ながら法的観点からの対応を検討する必要があるため,企業側の意向に沿う解決を志向するには,通常の訴訟以上に,弁護士による関与が不可欠であると言えます。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼する最大のメリットは,「労働審判の豊富な経験」が第一ではないかと思います。具体的には,申し立てから第1回審判期日までの流れ,労働者側や労働審判委員会の対応の予想,どの場面では主張し、どの場面では引き下がるかなど,実際に労働審判を経験した弁護士でなければ対応できるものではありません。
さいたまシティ法律事務所では,豊富な労働審判の経験をもとに,企業にとって最善の解決を導くために尽力します。
労働審判のスケジュール
以下は,労働審判の申立てがなされてから終了するまでの一般的な流れは次のとおりとなります。
※スケジュールは実際の事件を参考としたフィクションです
令和2年10月1日 労働者側による労働審判申立て
令和2年10月20日 裁判所からの呼出状が使用者に届く
裁判所からの呼出状が届いた時点で,初めて,労働審判が係属していることを把握します。
呼出状には,第1回労働審判期日及び答弁書の提出期限が定められています。裁判所から申立書が届いたら,直ちに弁護士と打ち合わせを行い,答弁書作成の準備に入ります。
令和2年11月2日 答弁書提出期限
通常は第1回労働審判期日の1週間前と定められます。締切厳守です。
令和2年11月9日 第1回労働審判期日
労働審判委員会(主に裁判官)から,労働者側、企業側双方の当事者に対して直接,事実の確認(審尋)が行われます。調停案が提示され、双方の意思確認や調整等を行い、互いの合意が得られれば,1回で調停が成立することもあります。審尋により生じた疑問点等を踏まえ,次回期日に双方当時者の宿題として課題を持ち越すこともあります。
令和2年12月9日 第2回労働審判期日
事実の確認は基本的に第1回期日で終えるため,第2回期日は,第1回期日での不明点の確認をしたり,話し合いによる解決の可能性について具体的に協議する場となります。
令和3年1月15日 第3回労働審判期日・調停成立
3回目の審判期日が開かれる場合,和解(調停成立)のための最後の調整のための期日と位置づけられます。
和解(調停不成立)に至らない場合は労働審判がなされますが,労働審判に対する異議が出た場合,労働審判手続の申立書が訴状とみなされ,通常訴訟に移行します。
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Last Updated on 2024年2月27日 by roumu.saitamacity-law
この記事の執筆者:代表弁護士 荒生祐樹 さいたまシティ法律事務所では、経営者の皆様の立場に身を置き、紛争の予防を第一の課題として、従業員の採用から退職までのリスク予防、雇用環境整備への助言等、近時の労働環境の変化を踏まえた上での労務顧問サービス(経営側)を提供しています。労働問題は、現在大きな転換点を迎えています。企業の実情に応じたリーガルサービスの提供に努め、皆様の企業の今後ますますの成長、発展に貢献していきたいと思います。 |