運送業の特徴について
運送・運輸業界は社会に欠かせない重要なインフラを担っている一方,業種柄,景気の影響を直接的に受けやすく,規制緩和と強化の波もあり,取り巻く環境は日々変化しています。
社会的なコンプライアンス意識の向上により,労働基準局から厳格な拘束時間,休息時間等の労務管理の徹底や運転時間の限度が要請される等,人事労務の問題は常に存在します。また,蔓延するドライバー不足,利益の出づらい多段階下請構造等,様々な課題へ対応していかなければなりません。さらに,業種の性質上,交通事故や損害保険の問題が発生しやすい特徴があることや,高齢者の継続雇用,近時最高裁判決が出た同一労働同一賃金の問題,有期雇用者の無期雇用への転換の問題等,これまでにはない,新たな問題への対応を迫られる業界でもあります。
さいたまシティ法律事務所では,従業員の労務問題・企業内のマネジメント,荷主や協力会社との契約書のリーガルチェック,行政への対応,交通事故・損害保険,労働災害等に関するご相談を,迅速かつ適切に行い,運送・物流会社経営者向けの顧問弁護士サービスを提供しています。
運送業界において発生しやすい労務問題
建設業は現場での作業が中心となるため,現場での労務管理が重要となります。特に,労働時間管理や安全衛生管理などは,現場での管理が重要といえます。ところが,こうした管理が不十分なまま現場作業が進んだ結果,長時間労働や労災事故が発生することがあります。その結果,企業に法的リスク(民事,刑事)や社会的リスクをもたらします。長時間労働による未払い残業代請求や,労災事故死による賠償責任はその典型であり,建設現場での労務管理の徹底は,こうしたリスク回避に必要不可欠です。以下,労務トラブルに対応するための具体策を解説します。
1 就業規則
就業規則は,常時10人以上の従業員(雇用形態は問いませんが,派遣社員は人数に含めません)を雇用している企業については,就業規則を作成し,所轄労働基準監督署長に届出する義務があります(労働基準法89条)。ただし,従業員の数が常時10人以下であっても,会社内のルールを策定し,トラブルを未然に防止するためには,就業規則は作成すべきです。
建設業は,労働時間,安全衛生管理,天候に左右される場合や繁忙期等の賃金体系,現場への移動時間など,一般的な就業規則とは異なる特有の事情があるため,留意する必要があります。
2 問題社員対応
建設業に従事する労働者の特徴として,事業主を転々と変えて働く場合が多いことや,雇用契約の内容も,日雇いから契約社員,無期契約,業務委託(個人事業主)まで多種多様です。とはいえ,一度従業員として雇用をすると簡単には解雇できないとの点は他の業種と同じです。
建設業だからといって問題社員対応が変わるものではありませんが,上記特徴に留意した上での問題社員対応が求められます。
3 メンタルヘルス・ハラスメント対応
建設業は工期厳守であり,かつ,外的な不確定要素が大きいこと,不規則な長時間労働,休日出勤などが多いこと,現場は閉鎖的な人間関係で,「縦社会」の古い文化が残っていること等を背景に,メンタルヘルス・ハラスメントの問題が生じることがあります。
4 労災対応
建設業における労災事故は,他業種と比べて重篤な災害が多いことが特徴です。例えば,工事現場における墜落・転落(高所作業や足場の不備による事故),飛来・落下物(高所作業からの工具や資材の落下),挟まれ・巻き込まれ事故(重機やクレーン作業中の不注意),切れ・こすれ(工具の取り扱いミス),感電や熱中症(電気工事や炎天下での作業環境によるもの)などが挙げられます。
労災事故が発生した場合は,労働基準監督書への報告や,「労働者死傷病報告書」の提出,元請け業者への報告等,労災保険の手続きを行う必要があります。使用者には,従業員に対する法令上の安全配慮義務が求められるため,すみやかな対応が求められます。
5 競業避止対応
建設業においては,前述のとおり事業主を転々と変えて働く場合が多いことや,その会社から独立して同業の建設業を営む場合が少なくないため,会社の取引先が奪わたり,従業員の引き抜きかれるといったことが往々にして起こり得ます。このようなことが起きた場合,会社経営に与える影響は甚大であるため,従業員に競業避止義務を課すなどの競業避止対応は重要です。
6 休職・復職対応
前述のとおり,建設業が持つ特有の事情からメンタルヘルスの問題が生じることが想定されるため,労働者の安全と健康を確保しながら,スムーズな復職を支援するプロセスを事前に策定しておくことが必要です。特に,建設業特有の作業環境や業務内容を考慮した対応が求められます。就業規則において休職・復職に関する規定を整備し,復職支援制度を導入するなどして,従業員が安心して復帰できる体制を構築する必要があります。
建設業において発生しやすい法務トラブル
建設業は,建設工事・建築物の金額が大きくなること,建設工事・建築物の内容が発注者ごとに異なることから,発注者との間で紛争に発展する可能性が高いといえる業種です。また,紛争化した際には,建設工事・建築物の内容に関して,建築・土木に関する知見を参照したうえで,対応する必要があります。以下,具体的な法務トラブルについて解説します。
1 請負代金などの債権回収
工事の完成・未完成が問題となったり,出来高の有無など,請求額そのものに争いがある場合や,発注者と連絡が取れなくなり,支払いを受けられないなどの問題が生じやすいところです。また,複数の下請けが関与している場合などは,当事者が複数となり,トラブルも複雑化することになります。
2 労災事故対応
前述のとおり,建設業は他の業種と比べて重大な労災事故が多いことが特徴です。労災事故が発生した場合は,労働基準監督書への報告や,「労働者死傷病報告書」の提出,元請け業者への報告等,労災保険の手続きを行う必要があります。
3 契約書
建設業においては,契約書を作成しないことも少なくなく,最近だとメールやLINEのやり取りだけで発注・受注を行うケースも見受けられます。やはり,トラブル防止のためにはやはり契約書を作成すべきです。契約書が作成できない場合でも,最低限,発注書,受注書を取り交わし,必要事項を記載することが必要でしょう。また,建設業法19条1項では,一定の事項について書面化することが求められています。また,同条2項では,一定の事項を変更する場合にもその変更内容を書面化することとされています。
4 工事監理・近隣トラブル(クレーム対応)
下請けに任せきりにすることによって適切な現場管理を行わず,また,近隣住民への事前の説明が不十分であったため,無用な近隣トラブルを招くことがあります。現場責任者をきちんと配置し,近隣住民にも事前にきちんと工事内容を説明するなどして理解を得,トラブルとならないように努めるべきです。
5 元請・下請けトラブル
建設業は複数の階層にわたって下請けを用いることが少なくなく,また,昨今では,人手不足から,外国人を下請けにすることも珍しくなくなりました。しかし,結局下請け任せにすることによって適切な指揮・監督ができておらず,重大なトラブルが生じてしまうということが少なくありません。そうした問題が生じた場合,トラブルを発生させた下請けの責任は勿論のこと,元請けにも法的な責任が発生します。また,下請けと元請けとの間で,責任の割合をどうすべきか,という問題も生じます。
運送業界特有の法的問題に関して弁護士ができること
さいたまシティ法律事務所では,運送企業の法的問題に関し,以下のとおりサポートします。
① 運送業の特性に応じた日常の労務・法務アドバイス
② 運送業の特性に応じた雇用契約書・就業規則等の整備
③ 運送業特有の書面・契約関係についてのチェック・書面作成対応
④ 運送業に起きる紛争・トラブルを予防するための制度作り
弁護士に依頼するメリット
以上のとおり,運送業界においては恒常的に長時間労働が発生しやすいという特徴があり,時間外労働手当の管理が不十分な場合が少なくないため,いざ労務問題が生じた場合,会社にとって深刻な結論を招くことがあり,かつ,その場合は他の社員の意欲等にも影響することから,放置することが許されない問題であると言えます。さいたまシティ法律事務所では,運送業の特性を踏まえた形での労務に関するアドバイスをご提供することが可能です。これにより,トラブルのリスクを最小限にとどめることが可能です。
すでに起きてしまった労働問題への対応だけではなく,将来のリスク回避のために,現在起きている問題を二度と生じさせないように改善に取り組むことが経営強化につながります。さいたまシティ法律事務所では,問題発生の根本を探求し,就業規則の整備・改善や,実際上の労務運用までリスク回避策を積極的に提案しています。問題が起きてからではなく,問題が起きる前に対応する土壌を作ることが,会社や従業員にとって何より望ましいものであり,経営の安定化につながります。
埼玉で弁護士をお探しの運送業の皆様は,是非さいたまシティ法律事務所にご相談ください。
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Last Updated on 2024年12月18日 by roumu.saitamacity-law
この記事の執筆者:代表弁護士 荒生祐樹 さいたまシティ法律事務所では、経営者の皆様の立場に身を置き、紛争の予防を第一の課題として、従業員の採用から退職までのリスク予防、雇用環境整備への助言等、近時の労働環境の変化を踏まえた上での労務顧問サービス(経営側)を提供しています。労働問題は、現在大きな転換点を迎えています。企業の実情に応じたリーガルサービスの提供に努め、皆様の企業の今後ますますの成長、発展に貢献していきたいと思います。 |